2003.12

2003年12月

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12月31日(水)
 28日に青山でサルサの演奏。これが今年の演奏し納めになる。ダンス
教室に通っている人たちが中心になっている企画で、だから基本的にお
客さんはみんなダンスが上手である。ニューヨークからわざわざプロの
ダンサーをゲストに呼ぶという凝りようだった。盛り上がったし楽しく
演奏できたのだが、こういうダンス教室主催のライブは実はちょっと苦
手でもある。お客さんは教室で習ってきた自分の踊りぶりを人に見ても
らおうと思って来ているわけだから、音楽を聞くことは二の次になって
しまう。うまい料理や酒を楽しみ、仲間とワイワイ集うという面も忘れ
られている。生活の中に音楽や踊りがあるのでなく、非日常にワープす
るために一生懸命ダンスを習っているわけ。まあ、日本人は踊りを忘れ
た民族だから、そうなってしまうのは仕方ないことなのだが。ダンス教
室は、金を取る以上、テクニック重視の、競技ダンスのような派手目な
踊りを教える他ないのだろう。ボラーチョスの常連のお客さんの一人は
「みんな音楽を全然聞いていなくて、ラテンでもロックでも変わらない
ような踊りばっかりしてる」と結構オカンムリであった。でも日本の会
社社会が、サルサが本来持っているような「個人が集団の中に入ること
によってより自発性を発揮する」空気を許すまでにはまだまだ時間がか
かりそうだな。

 マルセル・カルネの古い映画「黒いオルフェ」をビデオ屋で借りて見
る。これは、サンバとボサノヴァとの対比関係を、基本構造として隠し
持つ作品だな、と思った。民衆が奏で、踊るサンバの音楽は、激しいパ
ーカッションのうねりが前面に出た、リズム中心の音楽だが、主人公の
青年が歌うあの有名な主題歌は、洗練されたコードチェンジの妙がポイ
ントの、ハーモニー中心の音楽である。当時流行し始めたボサノヴァが
主人公たちの自意識を表し、サンバはいまだ堅固に存在している民衆の
互助的な生活意識を表す。主人公たちは初めは民衆の生活に深く根を下
ろしているが、青年が歌を完成させた頃から、だんだんそこから遊離し
初め、ギリシャ神話に象徴される西欧的な個我意識に囚われていく。
 グローバリゼーションの波の影響を実感させる、今見るとなかなか興
味深い映画だ。

 また一年が過ぎていく。来年はぼくも40歳になるわけだが、「不惑」
なんて言葉の意味は全くわからない。年相応の人生というものが、いつ
のまにか消え去ってしまった。今は死ぬまで生きなければならない時代
だ。徐々に人生が死に向かっていくのでなく、突然、断ち切られるよう
に人生が死によって終結する。こういうスタイルの人生というものをぼ
くは選択して生きてきたつもりであるが、改めて振り返るように考えて
みるとちょっと怖い感じもするのである。


12月27日(土) まただいぶ更新をさぼってしまった。会社で業務の再編成をしたりし てめちゃくちゃ忙しかったせいもあるが、パソコンが壊れてしまったと いうハプニングのせいもあった。情けないことにウィルスつきのメール を思いきり開いてしまったのだった。ウィルスってほんとすごいですね。 Windowsのファイルの一部が一瞬にして完全にダメになってしま った。メールやインターネットが使えなくなってしまい、当然ホームペ ージの更新もできなくなる。メーカーに相談してみると、ファイルの移 し変えができないこともないが、どこかに支障が出てくる可能性がない とは言い切れないとのこと。幸い(?)、ぼくが持っていたパソコンは Windows95が搭載されていた古いタイプのものだったので、これ を機会に買い換えることにした。なにぶん物臭なもので、マシンの購入 にもデータの移し変えにも結構時間がかかってしまい、このサイトを覗 いている(数少ない?)方々にはご迷惑をおかけしました。  更新をさぼっている間に、イラク情勢は大きく動いて何とフセインが 捕まってしまった。目をしょぼつかせて健康診断を受けている映像がヤ ラセっぽくて気持ち悪い。これで少しの間ブッシュの支持率が上がるの だろうか。フセインを尋問したところで大量破壊兵器は出てこなさそう な気がするが。自衛隊は予想通り着々と派遣への道を進んでいるが、行 くからには現地の人に喜ばれる活動をしてほしいものだ。テロリストた ちは、テロ活動によって資金の提供を受けて食っているわけで、決して 現地の人々の生活の向上のことなど考えていない。そういうことがわか るような活動を行ってくれれば、日本の株も少しは持ち直すことがある かもしれないなと甘い期待を抱きもするのだけど、日本は広報は苦手分 野だからなあ。  秋山和慶指揮の東京フィル他の演奏で、ヤナーチェックのオペラ「死 の家の記録」を観た(サントリーホール。演奏会形式)。ヤナーチェッ クの音楽は、物語の凸凹をそのまま音にしたようで、登場人物たちの心 境の変化に即して、音楽が小刻みに急展開を繰り返す。イタリアオペラ のようにゆったり聞き流すということができないからそれなりの体力を 要する音楽だと思うが、ドラマ好きの日本人の心情には意外と合うので はないだろうか。会場はほぼ満員、ヤナーチェックのオペラは実演では 「イェヌーファ」とこれしか聞いていないが、もっと演奏してほしい。 チェコ語上演は大変だとは思うけど。