2008年8月

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8月23日(土)
 「『幽』怪談ノ宴」を見に行くために京都へ。
 新幹線で3時間弱で目的地近くへ。せっかく京都へ来たのだからどこかお
寺を見ようと思い、妙心寺を訪ねる。建物も美しいが、庭がとにかくすばら
しい。わびさび、というよりもダイナミックな動きが感じられる。一つの景
観の中に多元的な視点が導入されていて、見るほどにそれが増幅していくよ
うな仕掛けになっているように思える。半日くらい居座ってしまいそうな気
分になったので、市電に乗って太秦映画村へ。
 初めて来たのだが、よくできたエンターティメント施設で、映画スターの
写真や小道具などがたくさん展示されている。もちろん子供向けの遊び場も
たくさんある。季節柄、妖怪や幽霊がテーマになっていて、おどろおどろし
い、しかもかわいい雰囲気を醸し出していた。日光江戸村のようだ。
 まず物販を覗きにいく。作家たちが待機していて、自著にサインなどをし
ている。品揃えはとても充実している。知り合いの版元さんにも挨拶。

 第一部は、評論家の東雅夫さん、作家の綾辻行人さん、中山市朗さん、加
門七海さん、森山東さんの座談。霊感が全くないという綾辻さんは、もしか
したらとても恐ろしい経験をしているのだが、怖すぎて記憶が抜け落ちてい
るのかもしれないという新説を披露。加門さんと森山さんは、井戸を巡る怪
しい話で盛り上がっていた。押入れに井戸がある料亭があるが、料亭の人は
それをひた隠しにしているのだという。森山さんによると、京都の古くから
ある家屋には必ず井戸がある、だから新築する際に井戸が妙なところに出て
しまったりすることはあり得る話なのだという。本当だとしたら、相当にシ
ュールだ。そういう土地柄が怪談を生む土壌ともなっているのだろう。

 一部が終って、東雅夫さんやポプラ社の斉藤さん、ビーケーワン怪談大賞
に参加された方々(今日は泊りがけで、オフ会もやるのだという)と挨拶。

 雨が激しくなってきて、客足が心配になったが、第二部は一部にもまして
の大盛況。ぼくは立ち見で話を聞いた。
 二部は作家の京極夏彦さんによる一般公募の創作怪談の朗読で始まった。
「烏丸線」(だい)、「怪談しびと鰻」(朱雀門出)、「くずきり」(岩里
藁人)が朗読されたが、どれも視点の定まりようが鮮やかな作品ばかりだっ
た。それにしても京極さんの朗読のうまさに唖然。何と言う芸達者な人なの
であろう。その後、東雅夫さんの司会で、福澤徹三さん、木原浩勝さん、平
山夢明さんによる怪談が披露される。特に平山さんによる、マンションに出
る女性の幽霊の話は大爆笑もの。女の幽霊にほれられて困った男が、霊が出
てくると色が変わるというカメレオンを購入するが、幽霊がベランダに出て
いる時は察知の領域外ということで色が変わらないのだ。平山さんの小説の
特長は、恐怖というよりブラックユーモアにあるのではないかと常々思って
いたが、それが顕著に表われた語りだった。
 
 実を言うとぼくも怪談大賞のオフ会とやらに顔を出したかったのであるが、
翌日新宿のクラブハイツでラテンのライブをやるため、帰らなければならな
い。帰りのバスの中で隣の女の子たちが長々とお喋りをしていたが、京都弁
というのはチャーミングなものですね。停留所の名前も珍しく、満員バスを
楽しんでしまいました。
 新幹線でビールを飲みながら弁当を食べ、そのあと、怪談大賞の大賞受賞
者、勝山海百合さんの『竜岩石とただならぬ娘』(MF文庫)を読む。小説
というよりは昔話みたいな語り口だが、作者が物語ることを楽しんでいる感
じが伝わってくる。アートアニメを見ているような快感を味わえた。 


8月21日(木)  造形作家の林・恵子さんとタレントでフェルト作家のよしきくりんさんと 表参道の台湾料理店で食事。よしきくりんさんはゲーム「ときめきメモリア ル」の声優として知られている人だが、林さんが小学校の同級生だった子で 今でもつきあいがある、ということを教えてくれた。びっくりした。そして 今回のプチ同窓会が実現したというわけだ。  よしきさんはものすごく精力的な感じで、芸能人オーラが滲み出ているよ うだった。小学校の時はかわいくておとなしめなイメージだったが、人は変 わるものだなあと思った。マスコミの仕事をしたくて業界に飛び込んだとこ ろ、声が面白いというので声優をつとめたのがタレントになるきっかけとい う。今ではCMやラジオなど、声に関わる仕事を幅広く行っている。  昔のクラスメイトと会う時、いつも思うのはものすごくイメージが変わる 人と余り変わらない人がはっきり分かれるな、ということ。よしきさんは大 変身だし、林さんは昔のままの感じだ。だが、どうかするとそれが逆になる。 二人に言わせるとぼくも変わらないほうの部類に入るそうだが、面白い人に なったと言われたので(笑)、良かったです。  さんざん喋って店を出たのは11時すぎ。楽しいひとときでした。
8月17日(日)  9月15日に開催する詩誌「モーアシビ」朗読会の「お土産」の制作打ち合わ せのためてんとうむし作家の(てんとうむしをテーマに造形を行う)林・恵 子さんと吉祥寺で会う。  沖縄料理屋に入り(注文した「ごはん定食」はヘルシーなおいしさだった)、 案を見せてもらう。ぼくが短い詩を書き、林さんがそれにあわせた造形を担 当するのだが、かわいくて奇抜なアイディアが気に入った。詳細は見てから のお楽しみなのでここでは書かないが、シンプルにして目を惹くああいうア イディアは、いつも絵や工作について考えている人にしか出てこないものだ ろう。御礼を言い、制作に入ってもらうことにする。  林さんがこの後、井の頭公園の動物園に仕事で取材に行くというのでおつ きあいすることに。  井の頭公園には何度も来ているが、動物園の中に入ったのは始めて。ライ オンとかクマのような猛獣は全くいなくて、カモシカとかタヌキとかサルを 丹念に見て回る。これはこれでとてもいいものだ。客がそんなにいないせい か、動物たちはみんなのんびりしているように思えた。リスのコーナーは、 順路の中をリスが自由に走りぬけられるような作りで、歩きながらリスとの ふれあいを楽しめるようになっている。サル山では、子ザルを連れた母ザル が、他のサルと全く変わらないスピードで飛び回るのには驚かされた。  動物園は本当に久しぶりにきたのであるが(10年以上来てない)、思い がけず満喫してしまった。言葉は持たないが感受性はある。言葉を持たない 感受性というものがどういうものか、見ていると興味が尽きない。また動物 園に来たいものだなあとも感じたが、男一人で入園するというのはちょっと 勇気がいりますよね(笑)。 
8月13日(水)  音楽合宿の反省も兼ねて(?)、ピアノの千葉さんと鎌倉デートをしてき ました。本当に久々の鎌倉。円覚寺や鶴岡八幡宮、大仏や長谷観音といった メジャーどころを歩いてきましたが、考えてみれば高校以来行ってないんで すね。神奈川県出身だから何となく鎌倉はわかってる気がしていたのですが とんでもなかったですね。その分、新鮮な気分になれて良かったです。特に 長谷観音のすばらしさに絶句。鎌倉は観光地の割には、静寂を保っていると ころがあり、いい感じです。機会があればまた来たいですね。ジャムセッシ ョンの運営上の話なども聞けて、それも良かったです。
8月10日(日)  溝口ジャズ同盟と町田のセッショングループによる音楽合宿に参加した。 9日の朝6時半に登戸に集合。7時すぎにバスで出発した。15時頃、ホテ ルプランタン(長野)に到着。周りに何もないところで、音楽をやるには最 高の場所。畑のひまわりがきれいだ。  ちょっと休んでから練習開始。グループ分けしてバンドごとに発表をやる という趣向だ。夕食をはさんで花火大会。みんな大はしゃぎしていてちょっ とかわいい感じがしましたね。またバンド練習して22時から本番。ぼくの バンドは、課題曲のSummer Timeと自由曲のSeven Step to Heavenをやった。 Summer Timeはぼくがファンクにアレンジしたが、ちょっと変わった雰囲気が 出てまずまずだったのではないかと思う。全員の演奏を聞いて、感想を紙に 書いて各バンドに渡す。こういうきちんとしたところがこの合宿の良さだ。  その後は全員入り乱れてのセッションで、朝の4時頃までジャムっていま した。みんな本当に音楽が好きなんですねえ。  翌日は8時に起きて、朝ごはんの後、またジャムセッションを行ってから チェックアウト。途中、「ぽんぽこの湯」という温泉に寄って疲れを癒して またバスへ。夜の8時くらいに登戸に着いてお開き。充実した2日間でした。  読んで感銘を受けて、紹介し忘れていた詩。  「季刊 凛 15号」の、傘をテーマにした野村尚志の詩2編。 「打ち捨てられた雨傘」、骨が折れて道に捨てられた傘を見て、いつか誰か が片付けることだろうが、それは傘が二度捨てられることなのだと考えると いう詩。  「まだ開かれていない雨傘」は、雨が降りそうな日に傘を持って外出する 「備え」について考察した詩。  「捨てられる」ことと「備える」こと。傘の実存と、それが人間によって 使用されたりされなかったりすることの間のギャップが鋭く指摘されている。 個と社会との関係を比喩化しているようでもあるが、説教臭さは一切ない。 きびきびとした思考の足どりが快い2編だった。
8月8日(金)  「ビーケーワン怪談大賞」の選考会のためにルノアールニュー銀座店へ。 定刻になったのに東雅夫さんが来ない。電話したら、今起きたところという。 選考作業を直前までやっていて疲れて寝入ってしまったとのことだった。も ちろん遅刻はしないで欲しいのだが(笑)、それだけ選考に力を入れていた ということであり、頭が下がる。今年は何と投稿作品数が725編にものぼ ったのだった。だが、全員そろって選考が始まると、意外にすんなり受賞作 が決まったのにびっくり。非常に納得のいく論理で納得のいく作品を選ぶこ とができて満足した。選考委員の加門七海先生からは「ビーケーワン怪談大 賞」の今後について明快な方針が示され、これは大きな意義があったと思う。 福澤徹三先生の一作一作への丁寧なコメントにも驚かされる。700編余の 全作品がきちんと頭の中で位置づけられているのだ。この賞、これからのホ ラー文学の方向に影響を与えていくのではないだろうか、と本気で思った。  選考会終了後、有楽町近くのしぶーい居酒屋で打ち上げ。皆様お疲れ様で した。   あとは、運営責任者としては関連商品の売上げが気になるところ。8月末 の締め日まで、頑張ってホラー・怪談文学を売りまくりますか。