2009年5月

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5月23日(土)
 外苑前のギャラリー「ときの忘れもの」で、「小野隆生コレクション展」を
見る。12点のテンペラ画・木炭画を鑑賞する。静謐ながら何か恐さを伴うよ
うな、緊張した佇まいがすばらしい。特に肖像画は、オーソドックスで穏やか
と言って良い構図なのに、輪郭が鋭すぎ、色の重ね方が特異であるために、何
か怪物が飛び出してきそうな感じを受ける。「ときの忘れもの」は、小野隆生
作品に早くから注目していたようで、これからも個展が開かれることと思う。
また是非足を運びたいものだ。
 見終わって、成城ホールで「TAP DO!」の公演を見る。前月みたばか
りだが、今回は旧作を丁寧に演じたという感じだ。コントよりも、本来のダン
スパフォーマンスが前面に出ている。タップダンスの面白さを堪能できた。特
に和風の演目が珍しく楽しかった。それにしても皆さん、芸達者ですねえ。

5月16日(土)  詩の合評会。  水嶋きょうこさん、山本洋介さん、北爪満喜さん、呉生さとこさん、森ミキ エさん、長田典子さん、中村葉子さんが出席。  ぼくは「呪い」というホラータッチの作品を読んで、まあまあ好評だった。 今回提出された作品はどれもクオリティが高くて面白く、合評会は4時間にも 及んだが、最後まで飽きることがなかった。目新しさという点では、特に山本 さんの「右から左へ」という作品が際立っていた。仕事の途中にドトールでサ ボッている会社員の姿を描いたもの。周囲の人間も自分も「右から左へ」と流 されるように生きている様をぼんやり眺めているうちに、足が凍っているのに 気づく。靴の氷をスプーンで削り取って、また流されるように日常に戻ってい く、という内容。「傍観者」的な立場でクールに周りを眺めているうちに、突 然、超現実的な出来事によて「当事者」の立場に立たされる、そのコントラス トが見事だ。  終って、長田さん、中村さんと居酒屋に寄ってだべる、長田さんは長年勤め ていた学校の仕事を今年いっぱいでやめるそう。海外に長期滞在をしてみたい という。中村さんは小説の仕事をちょっと休んで充電中のようだったが、今日 は「沼津行き」という作品を持ってきてくれた。母親と一緒に沼津へ遊びに行 ったことを描いた作品で、会話らしい会話がなくコミュニケーションが取れて いるとは思えないのに気まずくはならない。母親との微妙な距離感がよく出て いると思った。そこで11時近くまで話しこんでしまったから、8時間近く詩 人と会っていたことになる。  詩人という人種は面白く、かわいいものだ、と改めて感じた次第。
5月5日(火)  築地のキューバン・カフェでコンフント・ヒバロの演奏を聞く。  コンフント・ヒバロはぼくが入っているロス・ボラーチョスのメンバーであ る西澤純一さんがやっているもう一つのサルサバンド。80年代以降のニュー ヨークサルサをレパートリーとしている。  メンバーが入れ替わりが激しかったりして運営はいろいろ大変なようだった が、ここへ来て安定した演奏を聞かせてくれるようになった。選曲も良かった し、アンサンブルもきちっとしていた。これで全体のノリがもっと合うと、濃 厚な味の音楽になるだろう。  いつもはコロを担当している木元さんのソロヴォーカルとトレスのうまいの に唖然。会場には懐かしい顔もあり、和気藹々とした雰囲気のライブだった。 昔メンバーだった福田純子さんが復帰していたのも嬉しいニュース。みんな音 楽から離れられないんですね。
5月4日(月)  夜、イメージフォラムフェスティバルのBプロを見に行く。萩原朔美+鈴木志 郎康『老鴬』は、老いをテーマにした作品で、基本的には萩原朔美さんが初老 に達した自分の心持ちを語り、十歳年上である鈴木志郎康さんの生き方と比較 する、というものだった。萩原さんは、「体は確実に齢を取るのに心は齢を取 らない」と語り、精神年齢に合わせて体を作り変えるべきだとユーモラスに語 ったりする。事実、萩原さんは登山をし、空手を習い(瓦を割れる程上達して いる)、ドラムスを叩くなど、エネルギッシュでとても60歳とは思えない感 じである。ではあるが、アンチエイジングに励むというところで既に若さを失 いつつあることを自覚し、その自覚を映像で伝えようとしているように見えた。 一方、鈴木志郎康さんの方は身体の不調を語り、年齢によって体が動く範囲が 狭まったことを飄々と語りながらも、周囲の状況に対する目配せは万全で、精 神の柔軟さを感じさせてくれる。  最近では、生活の不安から二十代の若者が老後に備えて地道に貯蓄をしてい るようであり、そんなことも考え合わせると、お二人の生き方は何やら羨まし いような気がしてくるのだった。  同プログラムでは、小池照男さんの「生態系」シリーズ最新作が印象に残っ た。作者によるフルート生演奏つきだったが、悲哀を切々とうたっているよう で感銘を受けた。
5月3日(日)  昼間、ボリス・ベレゾフスキーによるバッハのゴルトベルク変奏曲を聴きに 行く。会場は東京国際フォーラムで、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンと いう音楽祭の一環のコンサートである。助成金がついているらしくチケットは 格安。今回のテーマはバッハのようだ。  ベレゾフスキーはチャイコフスキーコンクールの優勝者として知られている ピアニストだが、登場して、背の高さにちょっとびっくり。  ベレゾフスキーは、バッハをロマン派音楽のように表情豊かに弾いた。時折 まるでショパンを聞いているかのような錯覚に陥った程だった。ショパンはバ ッハを研究していたらしいので、本来はショパンがバッハの中のある要素を真 似したということなのだろう。が、戦後のピアニストたちはバッハをロマン派 風に弾くことをタブー視していた節があるから、こういうスタイルのバッハを 聞くのは久々である。バッハ―ショパン―スクリャービンというラインが見え 隠れするような、ユニークな演奏だった。  終って著述家の守屋さんと食事。食事の後、新幹線が見えるテラスに案内し てもらう。守屋さんの息子さんが男の子のご他聞にもれず、電車に夢中なのだ という。新幹線をじっくり「鑑賞」するのは初めてで何やら新鮮な気分になっ た。カメラを構えて新幹線の写真を撮っている人がたくさんいた。  帰りに、六本木の新国立美術館に寄り、美術家の松宮純夫さんから招待状を いただいていた「国展」に足を運ぶ。松宮さんの「映象」シリーズの新作が入 り口から入ってすぐのところに展示されていた。精緻で華麗な構図にいつもな がら驚かされる。もっと動きを感じさせるところがあればいいな、とも思った。 一通り見て帰宅し、定額給付金の申請などを書く。
5月2日(土)  昼頃、新宿の焼肉屋で、8月に行うジャムセッション仲間の合宿の打ち合わ せを行う。概要がどんどん決まって気持ちがいい。1000円ちょっとの定食 も、ボリュームがあっておいしかった。  終って千葉さんと井の頭自然文化園でデート。カモとかリスとかタヌキとか をゆっくり見て回る。トラなどの猛獣はいないが、その分小動物の見せ方をき ちんと工夫していることに好ましさを覚える。特に鳥類はよくケアをしている。 井の頭公園を軽く一周してから、手羽先の店で軽く飲み、ジャムセッションの 運営の仕方などについて喋る。  7時過ぎに店を出て帰宅。会社の仕事を少しやる。