2010年5月

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6月26日(土)
 前の職場で一緒に働いていた夏原さんが、近所に住んでいたのが都合で年
内に引っ越す予定というので、会ってご飯を食べた。8時半に祐天寺駅前で
待ち合わせ、学大との中間にあるアランチャというイタリア料理店に入る。
小さな店だが、繊細な味付けが魅力的でここら辺では結構人気店だ。ケーキ
もおいしい。
 夏原さんはベルギーチョコレート販売の会社に勤めているが、仕事の話を
いろいろ聞いて面白かった。日本で彼女が開発したチョコレートドリンクは
本社の人にもとても好評なのだが、なぜかあちらの人はレシピ通りに作れず
結局日本オンリーの商品になってしまうのだとか。日本人ってやはり器用な
のだろうか。元捨て猫のふーちゃんというメス猫も飼っていて、猫談義で盛
り上がった。初めて猫ボランティアのところに行った時、余り人に懐かない
ふーちゃんが、彼女を見て一直線に駆けよって、それを見たボランティアの
人が思わず泣き出してしまい、飼うことに決めたということだった。すばら
しい出会い。猫を幸せにすると絶対いいことがあります。ふーちゃんは最初
体重が1.5キロ程しかなかったそうだが、かわいがって世話をしたら4.4
キロまで増えてしまい、ダイエットが必要になっているとか。
 話が弾みすぎて12時を過ぎてしまい、慌てて店を出る。仕事も猫も順調
(!)そうだし、充実しているなあ、ぼくもがんばらなくては、と思った。
まあ、ぼくも猫に関しては順調ですが。


6月22日(火) いただいた鈴川夕伽莉さんの詩集『ミドリンガル』と今井義行さんの詩誌「 今井義行」の簡単な感想。  『ミドリンガル』は、掌サイズの小さな詩集で手作り感が良い。小児科医 として勤務する中での出来事や恋人と過ごす時間を描いた作品やいわゆる“ ポエム”調の短詩が収められている。特に前半の、愛情の在りかと憎悪の在 りか、被害性と加害性を、生活に即して綴った繊細な詩が良いと思った。詩 では自身を被害者として描くことは多くても、加害者として捉えることは少 ない。鈴川さんの詩集は、生きていく上で逃れられない加害性について、体 験に即して素直に言及している。父親との確執の部分もそうだが、小学校の 時に教室でめだかを飼っていたらタニシが繁殖し、その卵を全部ベランダに 叩き潰したと淡々と語るところには凄みのようなものを感じた。  今井さんの詩誌には「とてもたいくつなとき」という詩が収められていた。 ゲイサイトを通じての、50歳代のNさんとのメールのやりとりを、何の詩 的なレトリック抜きでそのままコピペしたような作品だ。【論考】で、「詩 において、レトリックで読ませる時代は終わった。比喩を駆使して、言葉を アートして見せる詩の役割は終わったのだと思う」と書かれてあった。「コ ミュニケーションの方法としての詩を自覚したいものである」とも書かれて あった。共感できるコメントだった。ぼくが最近書いている猫の詩も比喩を 極力排している。  比喩の詩が終わったというよりも、作品としての詩が終わったというべき ではないか。鈴川さんの詩も、野村尚志さんの近作も、普通の散文のような 軽い文体で言いたいことをストレートに綴っている。その分、読者は投げか けられる問題に正面から立ち向かわざるを得なくなる。どう立ち向かわせる かを工夫するところに、ハイブロウな「作品」としてではない、人との交点 を作る手段としての詩が成立しているように思える。詩は「出会い系」とな った。但し、ただで会えばいいのでなく、どういう出会い方をするかが問題 なのだ。
6月21日(月)  退社後、フェッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団の演奏を聞きにサント リーホールへ、行ったが、しまった! 間違えた。東京オペラシティホール だった! 慌てて初台に向かったが、着いた頃には時遅く、前半のプログラ ムは終了していた。トホホ。疲れている時はロクなことがないですね。前半 を聞いていた友人たちに聞くと、ブラームスの協奏曲を弾いたヨーゼフ・レ ンドヴァイの独奏がピカイチだったという。  休憩時間が終わり、気を取り直して後半のブラームスの4番を聞く。オー ケストラというより、弦楽四重奏のような、非常に繊細な演奏だった。弦が 特にすばらしい。細かいパッセージまで神経が行き届いていて、堅実でもあ り泣かせもする。この曲は、4楽章のパッサカリアが、新古典主義風なカッ チリした感じと、チャイコフスキーもかくやという程の感傷性が奇妙に融合 しているところが特徴なのだが、フィッシャーはどちらかと言えば小味に歌 わせることを重視したようだ。日本人好みの演奏と言えるだろうが、リズム はきりりとしていて気持ちがいい。  アンコールはロッシーニの変奏曲とバルトークのルーマニア舞曲。ロッシ ーニではレンドヴァイも交えた各奏者のソロが光り、ルーマニア舞曲ではう ねるような歌い回しがすばらしかった。  終わって居酒屋で飲む。鳩山政権の点数は100満点で80点だと半ば冗 談半ば本気で言ったら「えーっ」と言われる。
6月20日(日)  新橋ヤマハのトランペット教室に行ったが、一週間、日を間違えていた。 近くの四国料理の店で讃岐うどんを食べる。JRに乗って池袋方面にぐるっ と回りながら「ぴあ」を見て、面白いものはないか探す。イメージフォーラ ムで「ビルマVJ」というドキュメンタリー映画をやっていることがわかり 足を運ぶ。  「ビルマVJ」のVJはヴィデオジャーナリストの略で、2007年のビルマ の民主化運動を、ビルマ人活動家の視点で捉えたもの。政府の徹底した反体 制派の弾圧ぶりと、僧侶が中心になった大規模なデモの様子が、迫力をもっ て伝えられている。政府に対抗する主要な勢力として、宗教があるという点 が面白かった。しかし、結局弾圧されてしまう。  良い映画だとは思ったが、軍部は力で政権を維持するという姿勢を露わに しているのだから、こうした強硬なデモを行うのは犠牲者を出すばかりでは ないかとも思った。ワイロを使って、政権の中枢に、民主化に理解のある人 物を送り込むなどの手段も場合によっては取ったほうが良いのではないだろ うか。開き直った軍事政権に対しては、民衆の抵抗も外圧も、ともに限界が あるように感じられた。無論、ヴィデオジャーナリストたちの命を賭けた活 動には頭が下がる。  帰ってちょっと休み、それからサルサバンドの練習に行く。
6月19日(土)  昼過ぎに起床。ちょっと会社の仕事をしてから、溜まりに溜まった本を新 古書店に処分に行く。1900円だった。鄭大均著『在日の耐えられない軽さ』 を買う。その足で学大の行きつけの靴屋で安売りしていた黒い靴を買う。帰 ってまた少し会社の仕事をしてから溝口でジャムセッション。トランペット がぼくを含めて3人いた。打ち上げにも参加し、12時前に帰宅。
6月12日(土)  「ときの忘れもの」で尾形一郎・尾形優写真展「ウルトラバロック」を見 る。メキシコのカトリック教会の中を撮影したもので、まるで密教の寺院の ようにゴテゴテしている。メキシコの土俗的な文化が西欧の様式の中にずか ずか入り込んできたという感じで面白い。  見終わって用賀のキンのツボへ。今日は千葉香織クインテットのライブの 日で、今まで練習の成果を発表することとなる。ジョー・ヘンダーソンの「 Punjab」から始め、ウッディ・ショウの「Beyond All L imits」などの新主流派の曲を中心に演奏した。何とか吹ききって、お 客さんの反応も良かったけれど、譜面とくびっぴきで演奏してしまったのが 残念。もっと自由でこなれたプレイを行いたかったが、曲が難しいのでつい つい譜面を追ってしまい、譜面に縛られた演奏になってしまう。ちょっと反 省。  終わって、楽器を持ってきていた方とセッション。こちらは酔っ払いなが らの演奏で、ユルユルの出来だったが、流れという点では本番よりも良かっ たのかもしれない。聞きに来てくれた友人にも挨拶。  とにかく足をお運びいただき、ありがとうございました。これからも精進 致します。
6月10日(木)  退社にリハ。プログラムの曲を念入りにチェック。アドリブはともかく、 テーマはもっとスムーズに、軽快に吹きたいものだが、なかなかうまくいか ない。熱を入れて吹きすぎて、唇が少し腫れてしまった。本番までにひいて くれればよいが。
6月7日(月)  退社後、12日に行う千葉香織クインテットのライブのためのリハを行う。 とにかく難曲が多くて大変。だが何とか形になってきた。46歳の誕生日をメ ンバーに祝ってもらう。幾つになても誕生日を祝ってもらうのは嬉しいもの だ。
6月5日(土)  ビーケーワン怪談大賞が始まる。初日から投稿あり。今年は「みちのく怪 談コンテスト」もあるし、怪談文芸がブームになる予感。    午後は大学ジャズ研の先輩であるサックス奏者野口宗孝さんのお墓参り。 ジャズ研OBが横浜霊園に集まり、草むしりをした後、墓前でビールや日本 酒を飲みながら、野口さんを偲んだり互いの近況を話しあったりした。九州 に長いこといたピアノの東宮さんと久しぶりで会う。近々こちらへ戻るとい う。    打ち上げにいった皆と別れて中野のuna camera liveraというブックカフェ へ。「モーアシビ」同人の五十嵐倫子さんが一日店長をやっている。普通の マンションみたいな外見で、玄関から入ろうとしたらここは入り口でないと 言われ、ベランダ側から入り直す。ちょっと面白い。統一されたインテリア でなく、机や椅子は都合のつくものをどこかから運び入れたという感じだ。 そして本棚があり、自由に読めるようになっている。五十嵐さんに話を聞く と、結構盛況だったとのこと。五十嵐さんは詩集の置いてあるカフェを開く ことを計画中だ。注文したチャーイはおいしかったし、本好きが集まる落ち 着ける空間と感じた。五十嵐さんにはこれから頑張ってほしいです。  更にその後新宿に移動。ピットインで原朋直先生の演奏を聞く。松島啓之 との双頭バンドのアルバム発売記念ライブ。だが、今回は松島啓之は来られ ず、ベース、ドラムスも違う人だったから、アルバムとは別個のライブと考 えた方が良いかもしれない。  メンバーが異なるとは言っても演奏はすばらしい。ベースはビセンテ・ア ーチャー、ドラムスはマーカス・ギルモアだったが、この二人の黒人ミュー ジシャンが実に、堅実にして繊細な演奏を繰り広げ、全体の印象を多彩なも のにしていた。スタンダードを中心としたセッションで、前衛的なスタイル などではないのだがとっても斬新に響く。リズムが自由で、音を出すタイミ ングを微妙にズラしあったりするのが心地よい。ピアノはコンビを組むこと の多いユキ・アリマサ。  帰って、メルマガのための原稿書き。