2012年9月

<TOP>に戻る

9月29日(土)
 府中市美術館へ、ポール・デルヴォー展「夢をめぐる旅」を見に行く。
 デルヴォーは大好きな画家だが、最盛期の作品しか見たことがなかった。初
期の作品は印象派そのもの。デルヴォーということは抜きにして楽しめた。あ
の詩的な画風が示されるのは30代半ばからで、以外に遅咲きの画家であるこ
とを知る。
 夢のムード、夜のムードがたっぷりでうっとりしてしまう。
 今回は晩年の作品が特に興味深かった。あのすっきりとした感じは影を潜め、
登場人物と背景が融和した、曖昧模糊とした微妙な空気がいい。東洋の絵画の
ような印象も受ける。特に最晩年の「カリュプソー」(島に漂着したオデュッ
セウスを愛した女神)の柔らかな色調に魅了される。
 常設展も楽しみ(江戸小特集が良かった)、館内の喫茶店でクリームソーダ
を飲んで帰宅。

9月28日(金)  退社後、連れと阿佐ヶ谷駅で待ち合わせて、ネットで探したスペイン料理店 RISEへ。すごく安くて、小皿料理が300〜500円くらいで食べられる。 ビールやワインを飲み、魚介のパエリャも食べて、一人2500円ほど。そこ そこおいしかったし、コストパフォーマンス高し。また来たい。
9月23日(日)  鈴木志郎康さん、今井義行さんと、現代詩についての鼎談の本番2回目。雨 が降っていて、足の悪い志郎康さんをタクシーで迎えに行く。  4時間があっというまに過ぎてしまった。いずれネット上にアップされます のでお楽しみに。
9月22日(土)  横浜美術館に奈良美智「君や 僕に ちょっと似ている」展を見に行く。近作 を中心とした企画展で、まずは、入口付近の彫刻作品群に圧倒される。あのキ モカワイイ少女たちの顔が、巨大なブロンズとしてデーンと展示されるのだ。  全体に近作は、以前のポスト・ポップアートを気取ったハードエッジな部分 が薄れ、柔かな表情になっている。特に3.11以後の作品には慈愛さえ感じ られる。もちろん、今までのようなナマイキな表情の子供の作品もあるが、概 して丸くなった印象。成熟の証であるだろうが、少々さみしい感じもある。  それからプチ横浜観光。赤レンガ倉庫から山下公園、港の見える丘公園と歩 き、中華街で食事。格安のコースを頼んだら、最初から全ての料理が出てちょ っとびっくり。おいしかったけど。
9月21日(金)  サルサ界の大御所中の大御所、エル・グランコンボのライブに行ってきまし た。いやあ、すごかった。感動した。  グランコンボは、ぼくが所属しているロス・ボラーチョスが創設以来お手本 にし続けてきたバンドで、会場の新木場studio coastに着いたら、ロス・ボラ ーチョスのメンバーも勢ぞろいだった。  演奏が始まってびっくり。とにかくグルーヴがすごい。回るようなうねるよ うな。モントゥーノだけ聞いていても少しも飽きません。皆、高いレベルの技 術を持っているのに、個人芸のひけらかしなど全然せず、ダンサブルなサウン ドをめざして、アンサンブルの充実に徹する!  突き抜けるようなブラス隊、無駄なことは一切せずひたすら堅実にリズムを 刻んでなおかつ多彩さを演出するパーカッション隊、お茶目でサービス精神満 点のヴォーカル陣と、まさに完璧です。  ベースの塚本さんなど、感激の余り、会場をうろうろしながらボラーチョス のメンバー全員に「たまらないねえ」と声をかけ回るありさま。  ジャズをやっている方で、ラテン系の曲も上手になりたいと思っている方は、 歌入りビッグバンド編成の、上質のサルサバンドをじっくり聞くことをオスス メします。ラテンジャズだけ聞いていても、ラテンは絶対うまくなりません。  今月はエディー・パルミエリも聞けたし、幸せです。  これを機に、有名サルサバンドの来日の回数が増えることを期待したいもの です。  公演終了後、ボラーチョスのメンバーと月島の居酒屋で一杯。皆、自分たち が目指しているバンドがすごい演奏をしたことが嬉しくて、「ぼくたちの方向 は間違っていなかった」とヘンな自慢をしていました。
9月17日(月)  池袋のHumaxでアニメ映画「おおかみこどもの雪と雨」(細田守監督)を見る。 狼男の青年と恋に落ちた女子大生が2人の子供を出産するが、青年は死んでし まい、田舎で子育てに奮闘する、という話。子供たちは狼男の血を引いていて、 気持ちが高揚すると狼に変身してしまう。それで予防接種などにも連れて行け ず、人目を避けるため田舎で野菜作りなどする。失敗が続くが村の人たちが支 えてくれて貧しいながらも何とか生活が営めるようになる。やがて子供たちは 学校に行くようになるが、人間の子供としての資質と狼としての資質に引き裂 かれて悩むようになる。そして女の子は人間としての道を選び、男の子は狼と しての道を選ぶようになっていく・・・。  ツッコミどころ満載の設定&ストーリーだが、とても面白かった。母性愛の 話でもなければ自然回帰の話でもなく、マイノリティの生き方の話でさえない。 愛情が心の中に存在すれば、行き当たりばったりであっても、どんな場所でも どんな境遇でも楽しく生きていける、という思想が根底にある。かといって、 ラテン的に享楽的に生きるのでなく、地道に真面目に、礼儀を忘れず、という 姿勢でいくのが何とも日本人らしい。低成長時代の生きる知恵を物語化した映 画と見た。
9月16日(日)  甲府のサルサ・フェスティバル「サルサ・デ・ダンシン」に出演。朝7時半 に駒沢大学駅前で待ち合わせ、ベースの塚本さんの車に乗り込む。道がものす ごく混んでいて、4時間半程かけてようやく目的地へ。即、リハをやり、それ から昼食。ご飯に牛肉を乗せた弁当がおいしい。渡辺さんが焼いてくれたパン も食べ、ビールとワインを飲んで幸せな気分に。だが、外は猛烈に暑く、木陰 を求めて徘徊。涼しい場所を見つけ、朝早かったせいもあり、眠りこんでしま う。  1時過ぎにフェスティバルが始まり、いろいろなバンドの演奏を聞く。夕方 になって出番。5曲をまずまずの精度で演奏し、そのまま他のバンドの人も交 えてのデスカルガになだれこむ。猛暑の中を残ってくれ、また踊ってくれたた くさんのお客さん、ありがとうございました。  片付けを終えて6時半すぎに出発。恐ろしいほどの渋滞にまた巻き込まれ、 11時半すぎにようやく東京へ。疲れましたが楽しかったです。
9月15日(土)  中学時代の恩師・佐伯正一先生のお墓参り。12時に戸塚駅前に集合し、近 くのお寺へ。立派なお墓で、既にきれいに掃除もされていた。お花を供え、線 香を焚いて合掌。景色の良いところで眠ることができて、先生、いいですね。  帰りに参加者10名で食事。地元民の武藤さんオススメの店の串カツ定食は おいしかった。ビールも飲み、ちょっといい気分に。佐伯先生の思い出話や、 近況、昔のことなど、次から次へと話題が移り、結構長居してしまう。やはり 中学時代の友人は面白い。次は一周忌に集まることを約束して散会。
9月10日(月)  「幽」編集部の方のお誘いで、東雅夫さん、加門七海さん、福澤徹三さん、 立原透耶さんたちと渋谷で飲む。ちょっと悪だくみも。
9月9日(日)  サルサの巨匠エディ・パルミエリのバンドを聞きにブルーノートへ。彼のピ アノは以前、ドナルド・ハリソンやブライアン・リンチと一緒に来日した際に も聞いているが、その時はラテン・ジャズ編成だった。今回は歌入りのフル編 成のサルサバンドで来ている。メンバーは、エディ・パルミエリ(ピアノ)、 エルマン・オリベーラ(カンタンテ)、ジョセフ・ゴンサレス(コロ)、ネル ソン・ゴンサレス(トレス、コロ)、チャーリー・セプルベーダ、マイク・ロ ドリゲス(トランペット)、ジミー・ボッシュ、梶原徳典(トロンボーン)、 ルケス・カーティス(ベース)、ホセ・クラウゼル(ティンバレス)、ヴィン セント“リトル・ジョニー”リベロ(コンガ)、オルランド・ベガ(ボンゴ)。 全員が驚くべき名手だった。若いベースのルケス・カーティスのテクニックの すごさ、トレスのネルソン・ゴンザレスの音の分厚さ、パーカッション部隊の 強力なグルーヴ感、ホーン・セクションの輝かしさ。  エディ・パルミエリはモダンジャズの手法を大胆にサルサに導入した前衛派 として知られるが、実際に耳にして驚くのは、華麗なソロもさることながら、 モントゥーノでの堅実な弾きぶりだ。彼のピアノは、サルサの伝統に対してと ても忠実であり、その上に斬新なアプローチが築かれているのだ。これはメン バー全員に言えることで、誰ひとり「変なこと」をやらない。ソロの時は個性 いっぱいのプレイを披露し、アンサンブルになると無駄を省いた、精錬された プレイに徹する。個性をキラキラさせつつ、全員が一つの目的のために奉仕す る演奏ぶりは感動的で、陽気な曲想なのに、涙が出てきて困ってしまったのだ った。今月はグラン・コンボも聞きに行くし、自分自身も甲府のサルサイベン トに出演する。9月はサルサ月間なのだ。
9月8日(土)  損保ジャパン美術館に、ジェームズ・アンソール「写実と幻想の系譜」展を 見に行く。アンソールは19世紀末から20世紀初頭に活躍した画家で、仮面 や仮装をつけた人々が登場するグロテスクな絵が有名な人で、確か作品が高校 の教科書にも出てくる。そうしたシュールリアリズムの前触れのような作品を 楽しみにして足を運んだのだが、良い意味で期待を裏切られた。アンソールが 例の画風を確立するのは1890年代に入ってからなのだが、それ以前に、印 象派の絵やリアリズムを追求した古典絵画を研究した作品を多く残していて、 それら初期の作品を、参考作品とともに並列展示していたのだった。特に、1 7世紀のオランダ絵画との対比は興味深い。アンソールはあのような幻想的な 画風に、17世紀のリアリズムを経由して到達したのだった。醜いものは醜い なりに、しっかり見つめようという精神なのだろう。アンソールの場合、精密 な客観主義的なリアリズムを追求する方向ではなく、印象派の影響を受けて、 主観性を重視した方法で、グロテスクなものを描いたわけだ。既にクールベと かマネのような画家がタブーを破ったテーマで絵を描いていたわけだが、アン ソールはそれを一歩進めて、非リアリズムの世界に足を踏み入れた。そしてそ の元となったのが、17世紀オランダのヴァニタス絵画やピーター・ブリュー ゲルの風刺画だったというのがこの展覧会の企画意図である。なかなか大胆な 視点だ。まさか、アンソール展に行って17世紀の絵をたくさん見るとは思い もよらかなかったが、こうして展示されていると、ヨーロッパの美術の伝統の 中に現代美術が築かれていることがよくわかる。面白かった。  帰りに、新宿でご飯を食べに行ったが、その前にふらりと猫カフェデビュー をしてしう。ぼくはもちろん猫大好き人間だが、猫カフェはちょっと抵抗があ って、今まで入ったことがなかった。12畳くらいのスペースに12、3匹の 猫ちゃんたちがいて、自由に触ったり抱いたりして良いのだが、多くの猫は眠 そうな表情をしている。一匹、すぐに懐いて膝に乗ってくるアメリカンショー トヘアの猫もいたが、多くの猫はむしろ人間には無関心な感じ。それはそれで、 いいかなという気がした。猫は追い掛け回すものではない。その様子をちょっ と離れたところから愛でて、互いの気が合えば触らせてもらう、くらいのスタ ンスが基本だと思う。客の前ではぐったりしていても、店の人が入ってくると (猫耳をつけている!)、さっと態度が変わり、起きてくるのが面白い。  一時間程いて、新宿三丁目付近の九州料理の店で食事。
9月2日(日)  癒しを求めて井ノ頭公園の自然文化園へ。ここは何度か来ているのだが、草 食系の動物や鳥類が見られて、動物好きとしては押さえておきたいところだ。 カピバラやキツネ、ゾウの花子、ニホンザルの集団、そして足元を駆け抜ける リス、カモやツル類。雨の後のせいか人出も少なくてゆっくり見られたし、今 まで足を踏み入れたことのなかった彫刻館も見学できて満足。帰りは、タイ料 理の店に寄ってまた満足。休日らしい休日でした。