関口涼子との往復書簡3

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第3回目のメール 御返答ありがとうございます。とても面白いです。ぼくは書店業に就いておりますのでと ても参考になります。芸術表現は意外と流通の問題との関係が深いのではないかと思うので すね。 日本では定価販売制・委託販売制のおかげで流通の洪水が起こって一冊一冊の意味が失わ れる。フランスでは自由価格制・買切販売制のおかげで売れる書籍の流通が限定されるので、 純文学など文化価値のある書籍の場合逆にそれを緩和する動きがある。そんなふうに感じま した。 是非続きをお願いいたします。 辻和人
関口さんからの3回目の返信 ええと、お答えの第二段ですが、 > >また日本ではインターネットを通じ、現代詩の流れからはずれたところで詩のコミュ ニティができるようになりました。 詩誌のサイトを立ち上げている人はずいぶんいるようです。勿論ピンきりですが、中に はかなり広い視点から読みでのあるものを作っている人たちもいるみたいです。その際、 同人が国を越えて参加したりしているのが特徴ではないかと思います。 それはサイトで詩誌を作ることの大きな必然性にもなるわけですし。日本では、「夏夷」 なんかがそんな感じですか? > > 漫画の「コミケ」にならった自費出版詩集や同人詩誌を売買する自由市場「ポエケ ット」なるものも登場してなかなか人気を呼んでいるようです。ただし、そこには批評と いうものが存在しないので、残念ながら質的にはまだまだといったところです。 こういうものはフランスには存在しますか。 あります。「詩の市場」というのが毎年6月にサン・シュルピス教会前という地の利の 大変よい場所で開かれています。これは自費出版と言うよりどちらかというと詩を専門と した小出版社の見本市の体をなしています。大きな出版社は「メンツにかけて」参加し ないという印象があります。そこで行われている朗読会や来ている詩人の質は決して高く はなく、フランス人詩人の発見の場としてはあまり役には立たないのですが、地方の詩誌、 海外詩人の翻訳本(日本より多いとはいえ、こちらでも外国詩人の翻訳本の出版は難しく、 その国では有名でもフランスでは地方小出版社からの出版というケースが多いのです。詩 誌のバックナンバー安売りなどの利点のために私は出かけています。また、総合的な出版 見本市は各地であるので、その機会に小さい出版社を発見する機会があったり、朗読会や シンポジウムが行われたりもしています。それから、これはおそらく文化庁がかんでいる のだと思いますが、秋には読書週間に絡んで詩のイベントが行われたり、春には「詩の春」 といって(ださい名前ですが)やはり各地でシンポジウム・サイン会・朗読会などが行わ れています。 また、作家協会は郊外の問題の多い高校などに詩人を送り込んで、創作アトリエなどを 開いているようです。よい意味でも悪い意味でも、国家が文化・知識人を利用・囲い込み (「社会的に正当な存在」にしてしまう、というか・・・)しようとしている様子が見ら れます。勿論詩人の側もそれを逆手にとっていて、したたかなものですが。 前にお話しした国立書籍センターの補助のことですが、やはり周りの作家に聞いてみた ところいろいろと問題はあるようです。申請件数のほぼ3分の2は受理されてはいるよう ですが、審査員もまた作家なので決まった出版社しか通りにくい、審査員の好みが出る、 またこの補助がなくては事実上詩は出版できないので、誰かをつぶそうと思ったら簡単だ、 と言うこともあるみたいですし、アラブ出身の女性作家は、女性作家の台頭を好まないア ラブ人審査員がネックになると通りにくいとか、それはまあまたそれで問題はあるみたい です。こちらでは画廊も企画しかやらないので、日本のように貸し画廊から展覧会を始める、 という、ある意味では不毛でもありますがとりあえず始めることはできる、という手段が なく、出版社の場合も同じで、企画がほとんどなので自分が懐を痛めなくてすむ代わりに デビューは難しい、という事情があるようです。 本屋については、また。昨日はポンピドゥセンターで『ヴァカルム』という雑誌の面々 と朗読会をしてきました。200人くらい入って、盛況だったのですが、朗読会の状況につい ても、そのうちに。 関口涼子